11月号-言葉は人と人をつなぐもの

「言葉は人を傷つける」――そう、母によく言われて育ちました。
その言葉は心に深く残り、私は次第に「言語を使うこと」そのものを恐れるようになっていきました。
人を傷つけたくないと思えば思うほど、うまく言葉が出てこなくなり、逆に批判的な言葉が口をついて出てしまうこともありました。
言葉を慎重に選ぼうとするあまり、かえって誰かを傷つけてしまうのではないかという不安が募り、言葉に対する恐怖はさらに強くなっていったのです。
言葉を強く意識するようになったのは、小学校に入学してからでした。
クラスメイトたちが嬉しいことや悲しいことを言葉で表現しているのを見て、私はなぜか強い違和感を覚えました。
例えば、「今日は家族とお出かけして楽しかったです。」という言葉。
その一言が、どうしても「嘘っぽく」感じられたのです。お出かけには、楽しいことだけでなく、悲しさや怒りの感情も混ざっているはず。なのに、それを「楽しかった」の一言で片付けることに、どこか引っかかってしまいました。
当時の私は、その「嘘っぽさ」にばかりとらわれていて、「表現を学ぶ場」であるという本来の意味を見失っていたのだと思います。
けれど、心の中や頭の中には、伝えきれなかった言葉がいつも溢れていました。
「こう言いたかったのに言えなかった」「うまく伝わらなかった」という失敗感だけが積み重なり、「どうせ伝わらないのなら、もういい」と諦めるようになっていったのです。
アウトプットすることの大切さ
思いついたことや創造したことは、人によってすべて異なります。
100人いれば、100通りの考えや価値があります。
そのひとつひとつは、その人だけが生み出せるものであり、表現する価値があると私は思います。
相手のことを考えた時の発言を重要視すると、自分の言いたいことは半分になってしまいます。
相手のことを考えず100パーセントの自分を表現できた時、私たちは輝きはじめるのかもしれません。
自分の気持ちを言葉にすることは、自分の心と対話する大切な時間です。
それが例え暗い気持ちやつらい気持ちだとしても、表現してもいいのです。
そしてそれは、相手との「本当のコミュニケーション」を築くための第一歩になるのだと、今は思えるようになりました。

